リスタート・リスタート 

シャッター音が響く。

沈黙。

若くして旅立った仲間を思う瞬間。

黙祷からはじまった、僕らのリスタート。

 

 

 

 

 

ある教授は声を詰まらせた。

 

「ここにいてほしかった人がいることをタブー視してはいけない」

 

 

 

 

 

 

再開の喜びと、笑い声が満ちる空間に安堵する。

 

人間は立ち止まってばかりいられないと。

 

禍福は糾える縄の如し。

 

必ず光は見えるし

 

誰にだって幸せになる権利は

 

必ずあるのだ。

 

当たり前だけど忘れがちなこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

講義初日。

 

新しいアパート。

 

朝の光で目が覚めた。

 

一瞬、ここは阿蘇

 

あー、今日何限からだっけ。

 

空き時間に図書室の前の新聞コーナーで

 

スポーツ紙を読もう。

 

なんて考えてしまった。

 

苦笑いと、少々の胸の苦しさをコーヒーで流し込んで

 

僕は新しい校舎へと歩みを進めた。

 

熊本校舎の傷跡は目立つ。

 

割れたアスファルト、閉まらないドアに積み上げられた段ボール、

 

立ち入り禁止区域。

 

それでも耐えたこの校舎。

 

早急に各教室の場所を覚えなければ…。

 

焦燥と、嬉しさやわくわくが綯交ぜになった複雑な感情。

 

 

 

 

 

 

講義初日は実に賑やかだった。

 

忘れていたようなこの感覚。

 

各々志す道は違えど、同じ教授の講義を、

 

誰かの声を一室で聞くということ。

 

シャープペンシルの走る音、

 

ページをめくる紙の擦れる音。

 

講義ってこういうものだったんだ。

 

とんでもなく当り前のことを

 

今になって再認識。

 

「これが普通なんだ」

 

 

 

 

 

まだまだ、なにが起こるかわからないし

 

未来のことなんて誰にもわからない。

 

それでも農学部は歩み始めた、

 

これは紛れもない事実。

 

ここまでくることに

 

たくさんの方のお力が欠かせなかったこと。

 

これも事実。

 

僕は

 

用意されたこの空間で精一杯のことをしようという決意をした。

 

勉強がしたい。

 

こんな病弱でも、目指すところはあるのだ。

 

折角体もある程度言うことを聞くようになったのだ。

 

このチャンスを逃すことは勿体ない。

 

 

 

 

 

 

 

皆が

 

それぞれのスタート切って歩み始める。

 

速度はばらばらだし、そのベクトルは別々かもしれないけれど

 

皆に幸あれと願うばかりだ。

 

 

 

ーある歌人より 愛と 祈りを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ビルが見える。すごい。